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福島第一原子力発電所の事故を心配されている皆さんへ



福島第一原子力発電所の事故を心配されている皆さんへ

2011年3月24日版
北海道大学
金子 純一


福島第一原子力発電所の事故を心配されている皆さんへ

北海道大学大学院工学研究院の金子です。今回の福島第一原子力発電所での事故に関して複数の友人から質問を受けたことや、事故の影響がよくわからず恐怖を感じるといった声を聞かせていただいたことから、私の目から見てどの程度危ないのか、自分であればどのように対処するかをまとめました。不要な恐怖を感じないために必要な情報だと思って下さい。長文なので興味のある方のみお読みください。

なお、部分的に切り出すと意味合いが間違ってとられてしまう可能性があるので、「全文をそのままの形」で配布してくださる場合のみ転送を許可いたします。
本文を入手されたい方は金子までご連絡ください。

一般の方に正しい判断をしていただくために必要な情報を提供することが目的なので、直感重視で正確さには目をつぶって書きました。また時系列に従って書き加えていった事から、すでに心配しなくてよい事柄も含まれています。


私は原子力工学で博士号を取っており、専門は放射線計測です。
2000年に発生したJCO臨界事故当時は同じ東海村にある旧日本原子力研究所に勤務しておりました。
現在、北海道大学で放射線計測関係の教育・研究をしています。

福島第一原子力発電所の事故ですが、2011/3/18から3号機に対する地上からの放水作業が順調に進み始めたようなのでかなりほっとしております。
まだ予断は許しませんが、最悪の事態は免れつつあるようです。

内容は下記の通りです。

1. 放射性物質がまき散らされているようだけど、何に気を付ければよいのか?
2. 食べ物から放射性物質が検出されたようだが大丈夫か?
3. 原子炉の状態はどの程度危ないのか?
3-1 原子炉の状況について
3-2 使用済み核燃料プール



< 1. 放射性物質がまき散らされているようだけど、何に気を付ければよいのか? >

風向きや天候に左右されるので非常に大雑把ですが福島県以外の方は、赤ん坊を含めてナーバスになる必要はありません。
線量率が数μSv/h(新聞の表現だと毎時数μSvです)以下の所ではこの記述が適用になります。

現在、原子炉および使用済み核燃料プールから放出されている放射性物質はヨウ素131(131I)、キセノン133(133Xe)が中心でセシウム137(137Cs)が少し含まれます。
キセノンは希ガスなので体内に蓄積する心配はありません。ヨウ素は甲状腺に集まるので、原子炉周辺にいる乳幼児や妊婦はあらかじめヨウ素剤を服用して甲状腺をいっぱいにし、放射性物質であるヨウ素131が蓄積することを防ぎます。
ヨウ素剤は副作用がある事と40歳以上では飲んでも効果が無いことが知られています。素人が勝手にヨウ素剤を服用する事は危険です。またイソジン等を飲んでも体に悪いだけなのでやってはいけません。
以下、ヨウ素剤に関するホームページです。

http://www.remnet.jp/lecture/b03_03/1-3.html

普段から我々は放射線がたくさんある環境で生活をしており、我々の体からも1秒間に6000程度の放射線が出ています。
後程詳しく書きますが、これは食べ物によって体内に蓄積したカリウム40(40K)と炭素14(14C)による放射線が主です。
食べ物の他、宇宙線や地面などから年間平均で2.4mSvの線量を我々は浴びています。
インド(ケララ地方)や中国(陽江)など場所によってはこの10倍程度の放射線を浴びる地域がありますが、特に影響はありません。
普段聞き慣れない単位なのでわかりにくいかもしれませんがSvはシーベルトと呼び、放射線の種類やエネルギーを勘案したうえで被曝による影響を判断する尺度になります。
mSv(ミリシーベルト)、μSv(マイクロシーベルト)のmやμは補助単位で、mSvをμSvに直すと、m(ミリ): 10-3、μ(マイクロ): 10-6なので2.4mSv = 2,400 μSvになります。
人間は10 Sv程度の放射線を浴びるとほぼ100%死にますが、250 mSv (= 0.25 Sv)以上にならないと観測出来る影響が出ません。
これは、このレベルになってようやく人間の放射線防御機構が追い付かなくなることを意味しており、かなり高い放射線防御機能が備わっていると考えることも出来ます。

テレビなどで報道されている線量率を見ていると、関東北部の室外で0.数 μSv/h ~ 数μSv/hです。
仮に原子力発電所の事故が1か月続き、1μSv/hの線量率の場所にずーーーーーっといたとすると(室外なので凍死しそうですが…)、

1 μSv/h × 24時間 × 30日 = 720 μSv

の線量を被ばくしたことになります。

線量率と線量の関係は、自動車で走った時の速度と走行距離と同じだと思ってください。時速: km/hに時間をかけると走行距離: kmになりますよね。
線量率で騒いでも(瞬間最大風速のようなもの)はっきり言って無意味で、走行距離: kmに当たる線量: Svがいくつになったかが重要です。

話を戻します。720μSv = 0.72 mSvですから、通年で浴びる分に加えて3か月分の線量を余計に浴びたことになります。
直接的な影響(確定的影響と言います)が出るのが250 mSvからなので、全く影響は無いでしょう。
癌などの影響(確率的影響と言います)も実質的には無いものと考えてよいでしょう。
人間の寿命を短くする最大の要因は突き詰めていくと「ストレス」です。
実害の無い放射線よりも、その影響を心配するストレスの方がはるかに悪影響があるので、無駄なことを心配するのはやめましょう。

とは言え無駄な被ばくをしても得をすることは無いので具体的な対処法をまとめます。
テレビや新聞でも説明されていますが、基本的に花粉症対策と同じです。
放射性物質は「埃」について飛んできます。福島県の方はすでにやられているかと思いますが、茨城北部、宮城南部にお住いの人でも気になる方は、外出する際は肌をあまり露出させないようにして、マスクや帽子をかぶるとよいでしょう。
さらに家の中に「埃=放射性物質」を持ち込まないようにすることが重要です。
外から家に戻ったら、玄関の所で外套を叩いて埃を落とし、玄関に置いたビニール袋に入れるといいでしょう。
次に外に出る際には袋から出して同じ服を使ってよいことは言うまでもありません。
基本、「埃」なので手洗いやうがいも有効です。
叩けば落ちるし、洗えば流れるのが放射性物質です。「放射性物質=埃」と思って対策を行ってください。
これらの物質は埃にへばりついているので、地面に一番多く広がっています。
もし仮に線量が高い場所に入る可能性があるときは水で流して除染しやすい長靴などを履くと良いでしょう。家に入る前にザーッと水をかければ玄関を汚さずに済みます。被災地では水の入手が困難な事も考えられるので、その時は新聞紙などで拭いてもかなり違うと思います。要は埃を取るわけです。
線量率が高い原発近くでは、雨が降ると埃と一緒に放射性物質が落ちてくるので、その時は外出しない方が良いでしょう。

ちなみにヨウ素131は半減期: 8.1日、キセノン133の半減期: 5.2日なので、この2つは事故が収束して2~3か月も経つと実質的に消えてなくなります。
セシウム137は半減期が30年ほどあるので大量に放出された場合、長期的には問題になります。
筑波にある産業技術総合研究所の測定データを見ると、セシウム137はヨウ素131の3%強しか出ていないので今と同じ放出状況で終息すればまず問題ないと思います。

http://www.aist.go.jp/taisaku/ja/measure……index.html

3/22の新聞では茨城のひたちなかで相当量のセシウム137が検出されたとの報道がありましたが、これは降雨で大気中の埃が地表に落ちて濃度が上がったようです。
ヨウ素131とセシウム137の割合は後者が1割強となっています。
このセシウム137の量も管理区域から持ち出せる量の1/3との事なので外部からの被曝に関しては気にする必要は全くありません。
内部被曝については2.で説明します。


< 2. 食べ物から放射性物質が検出されたようだが大丈夫か? >
3/19に福島の牛乳とホウレンソウから基準値以上の放射性ヨウ素が検出されたという報道が出ました。
ここで想定している対象者は退避勧告及び室内退避勧告地域以外の地域を考えているので、津波の被災地域のように食べ物の入手に大きな困難が伴うケースは考えていません。
従って、基本的スタンスとして政府からの出荷規制がかかった野菜などを原子力発電所の事故が収まるまでは口にする必要は無いと考えています。
ただ、実際にどの程度危ないのか直感的に判断することは重要なので、後半に食べ物からの放射能の危なさ加減について書きました。

原子力事故の最大の損失となる風評被害を防ぐ観点から、我々がまず頭に入れるべき事としては、原子力発電所の事故が終息した後の事かと思います。
繰り返しになりますが、今放出されている放射性物質は大部分が揮発性の高い物質で、半減期の短いヨウ素131が中心です。
後述するセシウム137以外ではヨウ素131の半減期が最も長く8日で、原子力発電所からの放出が止まれば3か月経つと1/1000程度になり、実質的に無くなります。
半減期の10倍、8日×10 = 80日で計算すると、

1/2×1/2×1/2×1/2×1/2×1/2×1/2×1/2×1/2×1/2 = 1/1024

になります。
今は食品衛生法の暫定基準を超えていますが、原子力発電所からの放射性物質の放出が停止すれば、半月程度で基準以下になり、3か月も経たずに通常の状態に戻ることが分かります。

一つ気を付ける必要があるのは半減期30年のセシウム137です。
セシウムは純粋な状態では極めて反応性が高い低融点金属です。
核燃料の中では核分裂の結果、セシウム137が生成すると活性が強いので大部分はなんらかの化合物を作ると思います。
前述した筑波・産業技術総合研究所のデータを見ると、半減期の長いセシウム137はヨウ素131の3%程度です。
ここ数日の事故対応の進み方を見ると、この後、セシウム137の残留放射能を気にする必要のあるような放出のされ方はまずないと思います。
内部被曝を考えた場合、セシウムは代謝の早い物質なので体の中に実際にいる期間(生物学的半減期と言います)と半減期(物理的半減期と言います)を勘案した実効半減期は110~150日弱と比較的短いことが知られています。
当然ですが、いつも食べている物がセシウム137に汚染されている場合、セシウム137が常に補給されている状態になるので体内でいつもより余計なβ線を被曝し続けることになります。
長期的な観点から考えると、原子力発電所での事故が終息した後、保健物理屋
さんが作るセシウム137の濃度分布地図を待って定量的な判断する必要があるか
もしれません。
あと、現状の放出レベルではあまり気にする必要は無いと思いますが、食物連鎖によるセシウム137の濃縮については専門家の研究を待つ必要があるかもしれません。

ここ数日の新聞やテレビの報道を見ると、「今は基準値を超え摂取すべきでない事から一次的に出荷停止とする。ただし、原子力発電所の事故が終息すれば短期間で残留放射能の影響は無くなるので心配はない」という最も伝えるべき事柄が伝わっていないように感じました。
いずれにせよ、事故が終息した後、福島を中心に宮城、茨城は大きな風評被害を受けるでしょう。ひどい風評被害を目の当たりにしたJCO事故経験者として、心が痛みます。
これを読まれた方は、風評被害は無知から発生することを認識していただければと思います。
文部科学省も数年前からこの状今日を改善する必要性を感じ、小・中学校で放射線に関する教育を立ち上げようとしています。
ここで書いた説明を読めば、原子炉からの放射能の放出が現状のまま1カ月程
度で終息すれば、健康被害を受けることは無いのです。
今回の震災では福島、宮城、茨城は程度の差こそあれ大きな被害を受けているので、同じものが店頭で並んでいればしばらくの間はこれらの地域の産物を買うぐらいの心意気を皆さんに持っていただきたいと思います。
JCO事故の際、事故とは全く無関係でしたが、東海村のおいしい干し芋を自腹で買って、あちらこちらで配ったことを思い出しました。

ここまで「原子炉から放射性物質が放出されている間に関して、食べなくていいものは口にせずに済ます」というスタンスで書きましたが、仮に食べたとするとどの程度危ないのか考えてみました。
実はつくばにいるお友達から「家庭菜園の野菜を食べても大丈夫か?」という質問を頂いたのがきっかけです。

内部被曝の危なさ加減を判断するための基準として、誰でも体の中に持っている放射性物質と比較してどの程度の危ないか考えることにします。
最初の所で書きましたが、我々の体の中ではカリウム40、炭素14を中心に1秒間に6000程度の放射線が出ている事は述べました。
下記の資料によると体重60kgの人で、カリウム40から1秒間に4000程度、炭素14から2500程度だそうです。

http://www.ies.or.jp/japanese/mini/mini1……007-09.pdf

体重60kgの人の体内放射能(1秒あたりの原子核崩壊数)が6,000 Bqだとすると、

6000 Bq/ 60 kg = 100 Bq/kg

になります。
Bqとはベクレルと読み、1 Bqは1秒間に1回原子核崩壊が起こることを意味します。
ここで考える放射性物質はすべてβ線(電子)とγ線(光子)を出します。
正確には放出される電子のエネルギーやγ線のエネルギーと放出割合を考える必要がありますが、話が難しくなるので「放射能 = 1秒当たりの崩壊数 =Bq」のみ考えます。

食べ物の汚染を考えた時、ホウレンソウや牛乳の他、水道水のヨウ素131による汚染の話も新聞やテレビで報道されています。
ヨウ素131については前述したように甲状腺に集積するので、乳幼児についてはミルクに使う水道水の基準値は通常の1/3 (100 Bq/kg)に設定されています。
私には2011/2月生まれの双子(男の子&女の子)がいますが、今の所ミルクは一回当たり90cc、一日8回飲みます。大雑把に一日1リットルの水を彼らは摂取しています。
単位重さ当たりの放射能だと、100 Bq/kgは乳幼児の体内にある単位重さ当たりの放射能と同じということになります。
チェルノブイリ原子力発電所の事故の際も乳幼児や子供の甲状腺がんに関しては明らかな増加が見られたので基準もかなり厳しく設定されているのだと思います。
結論として、ペットボトルの水(軟水限定、硬水は要注意…国内産なら大丈夫。
輸入品は要確認)が入手可能であればつまらないリスクを負わせる必要はないので乳幼児や子供にまわし、大人が水道水を飲みましょう。
大人に関しては基準が守られている水道水であれば長期間飲んでも問題ありません。
また乳幼児の場合でも、ペットボトルの水が入手不可能な場合は脱水症状を起こすリスクの方がはるかに怖いので、水道水でミルクを作った方が良いという感じだと思います。

次に放射性物質をかぶった野菜を食べたらどのくらい危ないのかを考えてみました。
地震発生時、私は打ち合わせでつくばにおりましたが、交通機関が一切動かなかったため一泊させていただいたお友達からの質問に答える形で考えました。
泊めていただいた際には、家庭菜園のおいしい大根を頂きました。
新聞記事の話をすでに書きましたが、2011/3/20~21朝までに茨城・ひたちなかでは降雨があり、空中の埃が地面に落ちて13,000 MBq/km2のセシウム137が検出されています。
研究者の立場からすると、首をかしげたくなる単位の表記方法ですが (1平方kmのビニールシートを広げて埃を集めたのであれば納得!)、cm2あたりに書き直すと1.3 Bq/cm2のセシウム137が地表に降り注いだことになります。
放射線管理施設から外へ持ち出せる線量限度は4 Bq/cm2なので新聞に書いてあった持ち出し限度の1/3という値と合致します。
仮にひたちなかと同じセシウム137が落ちた後、私の友人が家庭菜園で丹精込めて育てたホウレンソウを1束食べたとします。
ホウレンソウを真上から見た時の実効的な占有面積は20cm×20cm程度でしょうか。とするとホウレンソウ一束あたり、

20cm×20cm×1.3 Bq/cm2 = 520 Bq

のセシウム137が表面に降りかかっていることになります。
私の友人は、私からのメールや新聞・テレビの報道も見ているので、ホウレンソウはしっかり洗って放射性物質の着いた埃を落としてから食べると思いますが、仮に洗いもせずにそのまま食べたとします。
おひたしにすると茹でる時に埃が落ちてしまうので、そのままバリバリ食べるか、あらいもせずに炒めて食べればたぶんかなりの量のセシウム137を摂取できます(汗)
体の中には常にカリウム40と炭素14を中心に6,500 Bq程度の放射能があります。
これと比較すると体内蓄積放射能8%増になります。
セシウム137は体内での実効半減期が110~150日程度なので、数回であればこのありえない条件で食べても全く問題が無いことが分かります。
ちなみにカリウム40、炭素14、セシウム137、ヨウ素131はすべてβ線放出核種で同時にγ線も放出します。
β線のエネルギーに違いはありますが与える影響は同じとみて良いでしょう。
前述したようにヨウ素のみが甲状腺に集まるのでその点には注意が必要です。
一方、ヨウ素131についてはセシウム137の7倍強の93,000 MBq/km2降り注いでいるので、こいつも一緒に全部摂取すると4,240 Bqとなり、体内蓄積放射能65%増になります。
比較対象として体の中にある放射能との比較をしましたが、1年間に自然に浴びる線量が2.4mSvであることは前にも述べました。この内訳をみると、

http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/……504/01.gif

食品からの摂取は0.3 mSvなので、2.4mSvの1/3になります。
一般家庭では食べる前に洗ってから調理するのが普通なのでこの放射能の数分の1に落ちることは間違いありません。
野菜には旬があるので、原子力発電所からヨウ素131が放出され続けるのが1~2カ月程度として、「野菜の旬を優先」という決断をし、その間食べ続けても大人に関しては実質的に放射線被ばくによる実害は無いように思います。
食品衛生法の基準は長期に渡って摂取し続けた時でも健康障害が出ないという確実な線で決められているので、葉物に関して出荷規制をかけた政府の立場はわかる気がします。
ちなみに私のお友達に対しては、「大根などは葉の部分以外は洗って食べれば問題なし。気持ち悪ければ、少し皮をむきましょう。葉物はよく水洗いすればまず大丈夫。念のため電離箱で確認してから食べることを勧めます。」とメールを出しました。
彼はX線発生装置のある研究所勤務なので、電離箱を使えるチャンスがあるのです。
普通の人はなかなかこういう訳にはいきませんよね。
いずれにしても、丹精込めて作った家庭菜園の野菜を放棄するストレスと洗ってももしかしたら放射性物質がついているかもしれない野菜を食べたストレスのどちらが大きいか考えて判断していただくことになります。
自分が放射線を直接測定する技術と十分な知識が無い状態でこの文章を読んだとしたら、私は不要なリスクを回避することを優先してヨウ素131が降らなくなるまで根物以外の野菜は菜園の肥やしにする決断をすると思います。
あと余計な話ですが、過去の原水爆実験が頻繁に行われた1950~60年代は膨大な量のセシウム137とストロンチウム90(90Sr、半減期:28.9年)が全世界にばらまかれています。
当時、東京在住者の歯からセシウム137が測定出来たと学生時代に授業で聞いたことがあります。
仮にこの状況を私が知ったとすれば、騒いだところで防ぐ方法も無いので体内放射線量が+αになったと割り切ったのだと思います。
以下のブログは当時の青森での放射性物質の降下量の推移です。
ストロンチウム90は半減期も長く、体に入ると出てこないので量はともあれ、こいつは嫌ですね。

http://1go1e2009.blog67.fc2.com/blog-ent……y-733.html


食べ物経由の内部被曝について書きましたが、仮に自分が線量計測業務で駆り出され空間線量率の高い福島第一原子力発電所周りで仕事をし続けることになった場合を想像すると、休息するための安全な室内環境を維持する埃落としの作業もなかなか大変なので…タイベックススーツ(←むちゃくちゃ汗をかきます)着て長靴履いているから、たいしたことないかな? 食べ物に関しては封の開いていないものを食べ、1カ月程度の特殊条件下での生活なので生鮮食料品の不足分はサプリメントと乾燥野菜をあらかじめ準備して補うでしょう。
室内退避勧告地域外で栽培、加工されたものが差し入れられたら、しばらくの期間食べ続けたところで体内放射能と似たようなレベルでしかないので、何も考えずに食べるでしょう。
体力の維持がつまらない事故を防ぐためには最重要なので、微々たる内部被曝のリスクよりも効果大と判断するからです。

基本は原子炉から放射性物質が放出しているしばらくの間は、脱水症状や他のリスクが大きくならない限りちょっと我慢するのが良いかと思います。


< 3. 原子炉の状態はどの程度危ないのか? >

話を簡単にするため原子炉の話を先にやり、そのあと危険度の高かった使用済み核燃料プールの話をします。

3-1 原子炉の状況について

原子力発電所の事故として皆さん誰もが知っているのがチェルノブイリの事故です。これは黒鉛チャンネル炉という、元々、原爆用のプルトニウムを生産するために作られた原子炉を発電用に転用したものです。この炉は運転中に燃料棒を抜き差ししてプルトニウムを効率よく生産することを主目的として作られたため、事故時に放射性物質の拡散を防ぐ原子炉格納容器がありません。
チェルノブイリ原発事故は反応度事故と呼ばれるもので、原子炉の出力が急上昇したため燃料棒が融け、蒸気爆発とそれに続く水素爆発によって原子炉が内部から破壊されました。
その後、黒鉛火災が発生し核分裂生成物を大気中高く舞い上げ、広範囲にわたる重篤な放射性物質による汚染を引き起こしたというのが一般的な解説です。
ただし、黒鉛火災については仁科先生という炉物理の大御所が授業中否定していた記憶があるので違うかもしれません。

今回の福島第一原子力発電所で使われている軽水炉はチェルノブイリのような反応度事故は原理的に起きません。
例えれば、ジャンボジェット機が宇宙に行けないのと同じです。
負の反応度といいますが、専門的になるのでやめておきます。

軽水炉で起こり得る最も重大な事故が1979年に米国・スリーマイル島(TMI)発電所で起きた、冷却材損失事故です。
今回の福島第一原子力発電所の事故はこれと基本的に同じです。
簡単に説明すると、地震によって炉心の入っている原子炉圧力容器から水漏れが起きました。
こういう場合に要となるのが、炉心を冷却するための装置(緊急炉心冷却システム:ECCS)です。
今回の事故では津波のため緊急用ディーゼル発電機が全滅したため、炉心を冷却するための要となるECCSを動かすことが出来なくなり、原子炉が空焚きになりました。
原子炉は運転を停止しても、核燃料の中で発生した放射性物質が崩壊する際に熱を出すので冷却が必要になります。
この冷却に失敗したのが今回の事故です。

炉心溶融を心配する質問を頂きましたが、今の所、1~3号機の原子炉への海水の注入は安定して行われているようなので、冷却が十分行われればまずは大丈夫です。
一番重要なことは「放射性物質=核分裂生成物」を外に出さない事です。
炉心(核燃料集合体)が融けても、一般の人への被害はまずありません。
今の揮発成分の放出が中心の状態を「おなら」、チェルノブイリの状態を「うんこ」をまき散らした状態と表現している八谷和彦さんのホームページがあります。

http://togetter.com/li/111871

1.で書いた揮発性の高いヨウ素131、キセノン133などは「おなら」です(笑)
「うんこ(=核分裂生成物)」を外部にまき散らさないことが最重要となります。

軽水炉は原子炉格納容器(原子炉圧力容器などが入っている外側の容器。
厚さ5cm程度の鋼鉄製)、原子炉圧力容器(炉心が入っている厚さ20cm程度の鋼鉄製の容器)の中に燃料集合体と制御棒からなる炉心が水の中に漬け込まれています。
ネットで調べたところ、事故を起こした1~5号機のMrak1炉心は圧力容器:16cm、格納容器:3cmの鋼鉄製との事です。
圧力容器の中に水がどのぐらい入っているかはわかりませんが、圧力容器が外側からであっても十分に冷やされていれば圧力容器に穴が開くことはまずありません。
融けた核燃料と圧力容器が反応して穴が開くにはかなり高い温度が必要となります。
私は金属坩堝を2000℃近くまで加熱して材料を溶かしてシンチレータという放射線計測に使用する材料の合成をやっていますが、化合物が出来て融点が下がるにしても減肉して圧力容器に孔をあけるには1000℃近い高温が継続して必要だと思います。
従って、水がその近傍に液体で存在できる限り圧力容器に貫通孔が生じるほどの反応がおこることはまずないでしょう。
当初は水蒸気爆発のリスクを感じましたが、今は安定して注水が行われているので大丈夫でしょう。
海水を注入したこともあり、事故を起こした原子力発電所が2度と使われることは無いでしょぅから、外にいる我々は「うんこ=核分裂生成物ご本尊」が外に出なければO.K.と思いましょう。

原子炉に関してちょっと心配なのが2号機です。
数日前に原子炉格納容器内で爆発があり、下の部分に破損が入ったとの情報がありました。空気が入り、水素爆発が原子炉格納容器内で発生することを恐れていましたが、あれから何日か経ったので今の所は大丈夫なようです。

あと、「3号機はプルサーマルをしているが、プルトニウムの影響は無いのか?」との質問を頂きました。
原子炉は新品の燃料として235ウランを3%に濃縮したウラン燃料を使います。
運転の最終段階では出力の40%程度は238ウランが中性子を吸収、β崩壊を経てできた239プルトニウムが担っています。
従って、プルサーマルだから特に危ないということはありません。
プルトニウムは物質中最悪の毒性を持つという話がありますが、化学物質としての毒性を心配する必要は無く、毒性の大部分はα線の放出によるものです。
α線放出物質としては半減期の短い(放射線を短時間にたくさん出す)241アメリシウム等の方がはるかに強力です。
ただ、プルトニウムはストロンチウム90(90Sr)同様、前述した実効的半減期が極めて長く、体内に一度入るとまず出てこないので注意が必要です。
従って、「うんこ」をまき散らさないことが極めて重要になるのです。


3-2 使用済み核燃料プール
3/18から自衛隊の航空機火災用消防車を中心とした放水作業が軌道に乗り始めたようなので、だいぶホッとしました。
19日19:00のニュースでは屈折放水塔車で連続注水が可能となったとの事なので、正直、やれやれですね。
17日の段階でヘリコプターからの放水がなかな進まない事や、機動隊が水もかけずに撤退した話を聞いたときは正直「状況、本当にわかってる? なんだったら僕が水かけに行く?」と真剣に思いました。

やばさ加減では原子炉よりもこちらの方がはるかに上でした。
ここまで読まれた方は重要なのが「おなら」の臭さは我慢するにしても、「うんこ」= 使用済み核燃料(核分裂生成物)をまき散らさないことに限ることはわかっていただけたのではないかと思います。

原子炉から取り出した使用済み燃料は自分で熱を出すため、原子炉から取り出した後しばらく冷却する必要があります。
発熱量は原子炉から出した後急激に下がりますが、「燃料集合体1本あたり、9か月経った時点で家庭用電気ストーブ3~4台分」とテレビで北海道大学の奈良林先生が言っておりました。
ただし、3号機では500本、4号機は1300本以上保管されていますから冷却しなければ、プールの水も沸騰します。

使用済み核燃料プールが非常に恐ろしいのは「うんこ」の飛散を防ぐ原子炉圧力容器も原子炉格納容器も無い事です。原子炉の空焚きに近い状態が使用済み核燃料プールで起き、4号機では水・ジルカロイ反応で発生した水素による爆発が生じ原子炉建屋(コンクリート厚さ:1m)が壊れました。
3号機ではプールの水が沸騰し、どの程度かわかりませんが使用済み核燃料がむき出しになった可能性があります。
3/21現在、3号機ではプールの容量の3倍程度の注水に成功したとのことです。
10mの水はγ線・中性子に対しては非常に良い遮蔽になります。放射性ヨウ素もかなり吸収されます。
あとは電源系の回復とあわせて、一歩一歩事故が収拾に向かうことを祈るしかないですね。

長文ご容赦ください。

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